保証協会融資の債権放棄に関する記事です…

2023年10月19日(木)

経営が厳しく金融債務の負担が大きい企業を再生支援する場合、私的整理等による再建を目指す際、計画立案を前提に債務削減=債権放棄による支援を行うケースが多いのですが、その際問題となっていたのが、信用保証協会の保証付き融資の扱いです。
記事にもあるように、民間金融機関が自前融資の債権を放棄しても、保証協会への債務は残ることになります。保証協会が計画を認めたとしても、保証債務を肩代わる原資は税金になるため、債権を放棄するには各自治体の議会による承認を得る必要があり、計画実現までに2~3カ月以上の期間を更に要するケースもありました。

保証協会融資、知事決裁で債権放棄可能に 29都道府県 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

全国47都道府県のうち、29の都道府県で議会承認を経ずに知事決裁で債権放棄を判断できるようになったことは、再生支援をする上では重要なポイントになるでしょう。
コロナ禍の際の支援策として実施された「ゼロゼロ融資(http://www.hfmc-honda.com/index-BLOG_20220110.html)」の返済が本格化、来年4月には最後のピークを迎えるようです。また、円安や原油高、更には、原発の処理水問題による海産物の輸出規制等中小企業を取り巻く環境は厳しさを増しており、再生支援を求めるニーズは今後さらに高まるものと思われます。

ゼロゼロ融資は大半が信用保証協会の保証付きであり、信用保証の取扱い実績の推移をみても2020年に急増する一方で、今年に入ってから代位弁済の割合が増加に転じています。

本来、再生計画を立案する際には、その内容が「実現可能性の高い=実抜計画」または 「合理的で実現可能性がある=合実計画」である必要がありますが、計画における債権放棄などの支援の額が確定しており、当該計画を超える追加的支援が必要と見込まれる状況でないことという前提条件があり、債権放棄の額を確定した再生スキームを円滑に行う上でも、今回の記事にある扱いはプラスになるのではないでしょうか。

しかし、現時点における金融機関の対応は、具体的な再建計画を立案するというよりも、約定返済を一時的に猶予する条件変更で対処するのが一般的であり、問題の先送りという状況のようです。
今年に入り倒産件数は増加に転じているようですが、来年には金利引き上げの可能性も出てきた中、経済活動の低迷が続き経営に困窮する企業は更に増加するのではないでしょうか。
中小・小規模企業が、本当に再生できるのか否か見極め支援する体制を整備するには、地域金融機関の役割が重要となりますが、積極的に取り組んでいる金融機関が見当たらないのは、保証付き融資であるがゆえに金融機関が直接的にリスク負担する必要がないからなのでしょうか。
金融機関の運営姿勢に課題があるように思われます。

 

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