事業価値を創出する知的資産経営の本質

 事業会社には、個人と同様、置かれている状況によって「(1)創業して間もない会社、(2)成長途上の会社、(3)成長から成熟期にさしかかった会社、さらには、(4)成熟から衰退期に向かっている会社、(5)衰退してしまった会社」とライフサイクルがあります。時々の状況に応じて会社として何をしなければいけないのか、経営者としては最適な事業戦略を考えるために「将来的に見込まれるキャッシュフロー」を適切に見極めることが重要であり、現在の事業が成り立っている「会社としての基礎的な要素」は何なのか、更に、その要素は将来的にどうなるのか予測できるか否かが重要です。

 つまり、会社にとってのライフサイクルを、(1)会社が持っている技術や権利、(2)会社の持つ優位性や特徴、(3)会社の基礎となる人やモノ等の資源を総合的に捉え、現在はどのポジションにあるのか、今後どのようなポジションに変化するのか見極めることが必要となるのです。

 「会社としての基礎的な要素」つまり、事業の競争力の源泉としての、人材、技術、技能、知的財産(特許・ブランド等)、組織力、顧客とのネットワークなど、決算書の数字には直接表れてこない資産を総称して「知的資産」と表すことができますが、これらの技術や技能、ノウハウ等は、典型的な「知的財産」として認識し、組み合わせて活用することで会社の収益と成長の源泉=「会社の強み」として磨き、有効活用しながら経営活動を行うことを「知的資産経営」と定義されています。
会社が事業を継続し持続的に成長する要因を正しく評価する=「会社の実力」を見極めるには、会社が持っている全ての経営資源(人・モノ・技術・ノウハウ・ブランド・取引関係者等)の実情を客観的に評価すると同時に、権利として守られている「知的財産権」はもとより、企業が事業を継続できる根拠となる「定性的要因=知的資産」を総合的な事業能力として評価し、効果的に活用する経営力を確立することが重要なのです。

         図表 

◎知的資産経営を実践する上で重要な要素

 では、経営者として「知的資産経営」を実践するにはどのようにしたらよいのか?
ポイントは以下の5つとなりますが、会社にとっての「具体的な目標=成果数値指標(=売上高や利益率等)」を設けることです。つまり「会社の強み(競争力の源泉)に着目し、それらの強みを認識し、磨き、有効活用しながら事業活動を行い」会社としての将来のあるべき姿を具体的な事業計画として体系化し、業績と知的資産の関連性を定期的にモニタリングすることで知的資産が有効に活用できているのか業績向上に寄与できているのか都度チェックできる体制を整えることです。

 
ポイント1 自社の強みをしっかりと認識する
 ポイント2 自社の強みがどのように収益につながるのかをまとめる
 ポイント3 自社の強みを活かした経営方針を明確にして、管理指標を設定する
 ポイント4 1から3の要素を「事業計画書」としてまとめる
 ポイント5 「事業計画書」の主要項目を実践する


 突き詰めれば、今後想定される数年間の収益や利益を現在の価値に表すことに他ならないのですが、立案された事業計画に基づき得られる「売上」「利益」をベースに現在価値を算定するには、保有する経営資源全ての状態と、業界における優位性等も考慮した上で、個別具体的に「数値化」して表すことです。単に売上高や利益、資産の規模等の数値だけではなく、従業員一人当たりの数値、取引する顧客の数や平均値等、効果を測定できるよう工夫することがポイントです。



※知的資産経営に関する事業計画書の内容に関しては、経済産業省が「知的資産経営告書作成マニュアル」等で記載事項として以下のように纏められています。
 (1)会社の理念
 (2)−1 会社の概要
 (2)−2 会社の沿革
 (3)−1 外部環境と自社のポジション
      ・機会・脅威
      ・業界環境と自社のポジション
 (3)−2 内部環境とビジネスモデル
      ・ビジネスモデル
      ・自社の強み
      ・自社の課題
 (4)価値創造ストーリー
      ・過去から現在のストーリー
      ・現在から将来のストーリー
 (5)今後のビジョン
 (6)知的資産活用マップ

 知的資産経営報告書とは、会社の実情を正確に理解し、且つ、対外的に示すことが目的となりますが、重要なポイントは「会社として今後どうするのか」という事業計画を明確にすることです。(1)事業計画達成の目標や達成の根拠に対する納得性を明確にする、(2)自社の強みに対する従業員間やセクション間の情報共有を促進し、組織として強みの活用を図る土壌ができるようにする、(3)従業員一人ひとりの業務がどのように会社業績に貢献しているのかを明確にし、モチベーションを向上させる、(4)金融機関や取引先などへ自社の魅力を伝えるツールとして活用することで、自社に対する理解度・信用度の向上が図る、ことが可能になります。
 

 Copyright 2019 HFMConsulting.Inc ,All Rights Reserved