PBR1倍割れ金融機関は改善策をどのように考えるべきか…

2023年7月19日(水)

PBRが1倍を割っている地方銀行が、問題を改善すべく対策を講じているという記事です。

地方銀行、PBR1倍割れ改善に動く 横浜銀行はM&A融資増 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

記事にもあるとおり、PBRはROE(自己資本利益率)にPER(株価収益率)を乗じて算出されますが、式を分解すると次の通りになります。
・ROE(%)=当期純利益(PL)÷株主資本(BS)×100
・PER(倍)=株価÷EPS(=当期純利益÷発行済株式総数)
・PBR(倍)=株価÷一株当り純資産(BS)

発行済み株式数を減らすべく自社株買いを実施するケースもあるようですが、収益性を如何にして高めるかが重要なポイントであり、収益性の高いファイナンスへの取組みや新たなフィービジネスへの取組み等中期経営計画に盛り込むケースが多くなっているようです。
そもそも、
PBRが1倍を下回っているということは、株価がその企業の純資産よりも安く、いま企業を解散した方が価値がある、つまり市場価値が解散価値を下回っているということで、市場から評価されていないことを意味しており、東証ではこの点を問題視しているようです。

本年3月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」ということで、上場企業に対して要請していますが、上場銀行の多くは自社判断で東京証券取引所のプライム市場での上場を選んでおり、その要請に対する対応とも言えます。
東証が示した内容は「cg27su00000048bt.pdf (jpx.co.jp)」となっています。

現状分析した上で改善すべき項目を具体化、改善すべき施策を計画として取りまとめ、その内容を開示することを求めているようですが、以下のポイント等も留意点として示しています。
・目標とする指標は、自社の状況を踏まえ、目標の設定に当たっては、具体的な到達水準・到達時期を示す方法のほか、目指すレンジを示す方法や、ROEやEPS(1株当たり利益)の成長率など変化率のトレンドを示す
・PBR1倍割れは、資本コストを上回る資本収益性を達成できていない、あるいは、成長性が投資者から十分に評価されていないことが示唆される1つの目安と考えられる

重要なのは、一過性の対策ではなく、持続的な成長に向けた収益強化策が期待されているということですので、金融機関も経営内容を根本から見直す必要があるということでしょう。
記事に書かれている対策は、上場企業としての株主対策という観点から、どれもが指摘されている数字を改善するための一つ手法のように見えますが、やはり、持続的な成長による収益強化をどのように実現するのか、そのためには、金融機関としての存在意義は何か?各金融機関がおかれている環境から、見直すことが必要ではないかと感じます。
特に、株主ではなく、事業収益の糧となっている利用者=顧客の立場を最優先し、顧客価値の極大化を実現する事業モデルを構築することに重点を置くべきとも思います。新たなIT技術を利活用しながら、経営側にとっても具体的メリットのある施策を打ち出してもらいたいものです。

 

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