外貨定期預金が大幅増加という記事ですが…

2022年9月7日(水)

9月7日の外国為替相場では、1ドル=144円台となり、1998年8月以来24年ぶりの円安ドル高水準を更新しましたが、 円安が急激に進行する中、個人による外貨定期預金の預け入れが急増しているようです。

個人、外貨定期預金が大幅増 ソニー銀行は金利10倍超に: 日本経済新聞 (nikkei.com)

今回の円安は、諸外国がインフレを抑制すべく政策金利の引き上げを実施す中、日本だけが、金融緩和=低金利政策を維持していることに起因すると言われていますが、日銀や日本政府の態度が明確でないため、円安傾向は今後も続くであろうと予測される方々も多いようです。
年初のドル円相場は115円29銭@ドルでしたが、その後上昇を続け、4月1日に122円50銭@ドルとなり、それ以後上昇を続けており、ついに、心理的節目ともいわれた140円を超えてしまいました。

このような環境下、5~6月頃は手持ちのドルを円に交換する個人の方が増える傾向にありましたが、新聞記事によると、この半年で外貨定期預金を利用する個人がが急増しているとのことです。表面上の金利が日本の定期預金金利=0.002%と比較すると1000倍以上になることから魅力があると考えられているのでしょうが、「為替リスク」というものを、どの程度、利用者に説明しているのか懸念されます。

預け入れた時と払い出す時の円と外国通貨の交換比率=為替レートの差により違いが生じる事を「為替差損」といいますが、6カ月や1年間の預け入れ金利がいくら高くても、期日での交換比率が低くなっていれば手許に戻ってくる円貨は元の金額を下回る危険(~為替変動リスクといいます)があります。
例えば、100万円の円を100円@ドルの時点で、年5%の米ドル1年定期預金に預けたと仮定した場合のイメージが以下のようになります。

円の価値がが5円高くなり95円@ドルになった場合は、税引前の元利合計額を円に換算しても、100万円の元本を下回ります。
更に、金融機関の場合は、円を預け入れるときと払い出す時では、換算する際のレートに2~4円の差=手数料があるのが一般的であり、その点も考慮した上で、元本が目減りするのかしないのかを見極める必要があります。

記事では、当該「為替リスク」の問題点について、最後で簡単に述べているだけですが、外国為替に関する知識が豊富でない一般個人の消費者に対しては、もう少し配慮した情報提供を望みたいものです。
また、商品を取り扱う金融機関に関しても、監督官庁が指導する「顧客本位の業務運営」を実践する上で、預入時の円の相場が期日経過時点でどのようになると損失が発生するのか、正しく説明・理解をしてもらった上で、契約してもらうことも必要になります。
定期預金商品の表面金利だけではなく、円に換算した後の元利金合計額がどの程度になるのか、実質的な利回りについても説明できるようにすべきではないでしょうか。

また、このようなリスクを回避すべく、解約時の円への交換レートを事前に契約する(=為替予約)ことも可能ですが、今回のように急激に円安へシフトする際のメリットを受けることは出来なくなり、金利差だけのメリットを受けることになります。
一般個人の方々は、おそらく、今後も円安が続けば、ドルを円に換算する際に儲かるだろう、ということから外貨預金を選択しているケースも多いのではないかと予想されます。商品を提供する金融機関側は、外貨の取扱手数料を得るメリットもあると予想できますが、利用者に対して商品の特性を正しく説明した上で契約する営業体制を強化してもらいたいものです。ネットでの販売でも当然工夫されているとは思いますが…

 

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