金融機関の異事業への参入報道が増えてきた…

2022年5月9日(月)

昨年改正された「銀行法」では、出資及び業務に関する制限が緩和されたことから、グループ会社も含め銀行が新たな事業へ参入するケースが多くなっているようです。

電力に銀行初参入 山陰合同銀、再エネ活用で収益多様化: 日本経済新聞 (nikkei.com)
三菱UFJ銀、サイバーエージェントと提携し広告事業参入…同意得て匿名化の顧客情報活用(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース

出資制限の緩和に関しては、事業承継支援による株式の保有期間が最大10年まで延長され、経営再建支援でも民事再生企業に限定されていた出資条件が緩和されています。更に、地域活性化事業会社に対しては100%の出資が認められており、支援企業の経営に銀行が当事者として参画することが可能となっており、山陰合同銀行による電力事業参入は、まさに地域活性化を目的としたものと思われます。
地域金融機関の生き残り戦略を考えた場合、地域経済を活性化させるための手段として、様々な事業モデルに銀行が参画し、運営してゆくことは必然の考えかたでしょうが、銀行業としての立ち位置を明確にすることも重要になるかと思います。

業務範囲の拡大に関しは、自身で開発したシステムやアプリの販売、登録型人材派遣、見守りサービス、蓄積された顧客データの分析やマーケティング、広告業務等が可能となっており、今回の三菱UFJ銀行の事業は、顧客データの活用と広告業をミックスした内容でしょう。
広告関連に関しては、住信SBIネット銀行が参入を表明しており、三井住友フィナンシャルグループと電通グループによる共同出資会社も設立されるなど拡大する可能性が高いと思いますが、今後、地方銀行と地元企業による地域密着型の広告関連事業も検討されるのではないでしょうか。

しかし、金融機関の場合、預金を預かるだけではなく、貸出し業務も手掛けており、以前より「優越的地位の濫用」や「利益相反」を回避すべく出資や業務に関しては制限が設けられていたわけで、改正されたことで緩和された結果ではありますが、やはり、金融機関という立場を加味した対応が必要になるでしょう。
特に、個人に関する情報の利用に関しては「匿名化」も含め、利用者本人による同意を得ることとが大前提であり、この点は、しっかりした対策を講じているか、監督する側も厳格な対応をした方が良いのではないでしょうか。上場会社は、特に、利益を最優先する経営を指向する傾向が強いことから、本来最優先すべきである顧客対応を疎かにした経営にならないように歯止めをかける「ガバナンス」をしっかり持つことも重要になると思います。
儲からない時代だからこそ、新規事業で儲けようという機運により「タガが外れ」てしまっては、本来あるべき利用者保護にならない結果になる可能性がある点を、考慮する必要もあるでしょう。

 

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