残価設定型住宅ローンの事業化ついての記事です…

2020年10月13日(火)

国土交通省が、住宅資産の将来価値を前提とした残価設定型住宅ローンについて事業化の検討を開始すると発表しています。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64820120Z01C20A0EE8000/

この商品概要に関しては、私が前職で、国土交通省が主催した「中古住宅活性化ラウンドテーブル」の委員を務めていた際に報告させていただいたものと思われます。
2015年の報告書にも概要は記載されいます。https://www.mlit.go.jp/common/001089397.pdf

当時、公表した際は、金融機関も含め消極的でしたが、5年を経てようやく動き出すというイメージですね。
記事にもあるように、住宅の資産価値を維持できるか否かが重要であり、それを前提に、5年、10年後の物件の評価をどのように行うのかがポイントになります。
当時は、都内のマンションを対象に、仮に賃貸で運用した場合に得られるであろう収益額を前提にDCF法を利用して価格算定しました。色々な要素を考慮する必要があるので、一概には言えませんが、それなりの評価が出せたことを覚えています。
ただ、戸建住宅の評価をどのように行うかが課題で明確な解はだせませんでした。移住住み替え支援機構が賃貸で運用する料金を前提に評価することも議論されましたが、本格化には至りませんでした。
本格的に検討するのであれば、土地の長期間の価格推移、建物の建築時の様式や修繕維持の状態等を考慮しながら、原価法による評価をベースに推計モデルを設計できるのではないかと思っています。

もう一点重要な要素して、当時商品設計をした際に考えたのが「ノンリコール型ローン」とすることです。
基本的な考え方は、5年または10年経過時点で、残価設定額により物件でローンの支払いを代物弁済するというものです。金融機関は、代物弁済を受けた物件を市場で売却等することで、貸金を最終的に回収するスキームとしましたが、その時点で、評価額を下回った場合、金融機関に損失が発生することになり、この部分を如何にして補完できるかが課題となります。
保険等を付与することも考えられますが、利用者の費用負担も大きくなり、既存の住宅ローンと比較すると、メリットがあまり出ないという点も課題となりました。
事業化を検討する上では、商品性をどのように組み立てるかが課題になるでしょう。

また、事業化が可能となれば、コロナ禍で賃金が減りローンの返済に窮する方々を支援するスキームに取り入れることも考えられます。
現時点で、5年後か10年後の物件価値を評価し、当該金額を残価設定型ローンに組み替え、差額分を返済するという仕組みにすると、現在の返済額を軽減することも可能になる、ということです。
今後、事業化をする上では、上記のような様々な課題を解決する必要があるのでしょうが、国としてどのように推進しいくのか見守りたいと思います。

 

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