ステーブルコインへ警鐘との記事です

2025年10月15日(水)

国際通貨基金(IMF)は14日、国際金融安定性報告書(GFSR)を公表、金融システムに与えるリスクに警鐘を鳴らし、規制や監督制度の整備を唱えたという記事です。

IMF、ステーブルコインに警鐘 取り付け騒動など「金融安定にリスク」 - 日本経済新聞

記事の中では、ステーブルコインなど民間発行の暗号資産(仮想通貨)市場が2025年に2300億ドル(34兆5000億円)規模に達し、過去6年で70倍超に膨張したとされています。米国のトランプ大統領も暗号資産(仮想通貨)の取り扱いを積極的に支援する意向を示していますし、仮想通貨の価格も高騰していることから世界的に注目されておいり、4日前には、「三菱UFJ銀行など世界大手10行、G7通貨連動のステーブルコイン検討へ - 日本経済新聞 」という記事が出たばかりです。また、9月には、欧州の大手金融機関9行が展開するコンソーシアムで、ユーロ連動のステーブルコインを発行する新会社を設立すると発表されており、 今後の動向が注目されそうですが、報告書は、金融システムを安定させるとい観点から問題点を指摘、制度対応が必要ではないかと意見を纏めたものと思われます。

そもそも、ステーブルコインとは、「法定通貨(米ドルや円)や資産(金)に連動するよう設計され、価格変動を抑えることを前提とした暗号資産=仮想通貨」と定義されていますが、技術として利用されるブロックチェーン上では、国際間での送金コストを安く抑えたリアルタイム送金を実現したり、DeFi(分散型金融=中央管理者を介さずにブロックチェーン上で金融取引を実現する仕組))などの自動取引に利用できることから、今後、新たサービス開発の仕組み=決済通貨として注目される可能性は高いのではないでしょうか。

報告書で指摘されている3つのリスクは、金融のグローバル化という観点から捉えられていますが、国内に目線を転じると、リスクの一つである金融の仲介機能が弱まる可能性は考慮する必要があるのではないでしょうか。
日本では、
2023年施行の「改正資金決済法」で「電子決済手段」として法的枠組みが整備され、銀行・信託会社・資金移動業者のみが発行可能とされており、三菱UFJ信託銀行が主導で検討している「Progmat Coin」が代表例です。また、地方銀行等も実証実験を開始すると公表しています。定義上は「法定通貨の価値と連動した価格(1コイン=1円)で発行され、発行価格と同額で償還を約するもの(及びこれに準ずるもの)」と定められており、アルゴリズムで価格の安定を図る「暗号資産型コイン(=価格変動リスクの高い通貨)」は対象になっていません。

仮に、今後、国内の金融機関がステーブルコインの発行に注力した場合に想定される懸念点は、銀行預金がステーブルコインに急速に置き換わると仮定した際、裏付け資産となる短期国債への需要が高まり、預金でまかなわれていた長期債や融資への資金が目減りすことで、貸出のための資金が集めにくくなり、信用仲介機能が弱まる可能性があるという点でしょうか。
この点は、現在、民間で急速に拡大してるキャッシュレス決済の取扱いにより、金融機関の預金が相対的に減少傾向にあることからも想定できます。例えば、金融機関を介さずフィンテック企業が提供する口座に給与を直接振り込む「デジタル払い」の給与支払い(=金融機関が独占していた給与振込)が解禁されましたが、安全面で躊躇されていた扱いもシステム面で安全性が担保されたことで、生活に必要な決済口座として利用する消費者は更に増え、結果として金融仲介機能の原資でもある「預金」が減少に転じる可能性が高くなっている点です。
現在提供されているデジタル化による決済サービスは、大半が既存の金融機能を仲介して行なわれていますが、ステーブルコインのような「仮想通貨」をベースとした資金を原資とした「決済機能」や「ファイナンス機能」が、今後、DeFi技術をベースに検討されることを考えれば、新たな「仲介機能」が生まれる可能性は否定できません。
制度面の改革も含め、今後、どのような金融サービスが誕生するのか見守りたいものです。

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