住宅ローン審査即時判定との記事ですが…

2025年07月15日(火)

最も適した住宅ローン商品をランキング形式で提案するオンラインサービを提供する「モゲチェック社(:株式会社MFS )」が 、消費者が希望する条件(固定・変動金利、団体信用生命保険など)や属性情報に基づいてリアルタイムで住宅ローンの事前審査通過可能性を推定する新機能「モゲチェックプレ審査」の提供を開始するそうです。

モゲチェック、住宅ローン審査結果を即時判定 まずPayPay銀行と - 日本経済新聞

MFSが蓄積してきた膨大な金融機関の審査結果データを活用し、モゲチェックサイト上で住宅ローン診断を受けたユーザーに対して、各金融機関の審査に通るかどうかを高い精度で即時推定する、無料で利用できるサービスとのことです。
但し、「本機能はあくまで推定であり、実際の審査通過を保証するものではありません」という条件付きのようですが、PayPay銀行側としては相応の条件を事前決定し、審査の手間を簡素化することを狙っているように思います。

一般的な住宅ローンの審査では、①借主が安定した収入を維持し無理なく返済できるか、②購入する物件の価格と融資申し込み金額の割合、③借主の属性と信用状態、の3点を総合的に判断されます。
①収入に対する返済比率=DTIと言われるもので、年収に対する負債返済額の割合を示していますが、年間収入に応じて一定基準が設けられています。②LTV=ローンツーバリューという、物件価値に対するローン契約額の割合になりますが、自己資金をどの位の割合で負担できるかという観点から捉えることもできます。③は年齢・年収・勤務先や勤続年数・家族構成・他の負債状況等①の前提条件となる要素で、信用情報機関の登録情報(ネガティブ)も大きく影響されます。

金融機関によっては、保証機関の保証が受けられるか否かを最終判断材料とするケースもありますが、保証機関も①~③の要素を基準に判定していますので、①~③の要素をベースに、今流行りの「ビックデータ分析=AI機能活用」により、モデルを体系化されているものと思います。
住宅ローン商品の特性である「適用金利」と「貸出期間」の組み合わせで「年間返済額」が大きく変化する点をどのように取り込んでいるかがポイントになるのではないでしょうか。最優遇された条件を適用した場合と厳格な条件を適用した場合では、DTIが大きく変わりローン契約金額を嵩上げすることもできるからです。

一方で、住宅ローンを取り扱う金融機関側の立場を考えた場合、住宅ローンの商品性から、借主は長期間安定した収入を得られることが大前提であり、万が一収入が途絶えた場合は、最終的に融資対象物件である住宅の資産価値≒処分可能額により完済してもらえるか否かが判断ポイントになり、審査段階で重要視されます。①DTIと②LTVのマトリックス表によるグループ基準をベースに③の要素を加味し判定するモデルを構築するのが一般的ですが、入り口段階の審査へ適用するよりも、融資実行後の債務者の状態変化を如何にして確認、類推できるか「モニタリング」機能への適用強化を図ることが重要と思います。
過去に、住宅ローン利用先のデフォルトする可能性を検証しましたが、①DTI<25%、②LTV<70%のケースに該当する債務者は、10年経過してもデフォルトする可能性は極めて稀でしたが、契約期間中に借り換えにより他行へ肩代わりされる可能性が高いという傾向もあり、繰り上げ返済による期待利益の損失可能性を如何にして管理できるかが重要になるのではないでしょうか。

個人の住宅資産に関連する「入り口」から「出口」までのライフサイクルに応じた時々のイベントを前提に、商品を設計し運用することが重要であり、金融機関に求められているテーマと感じているのは私だけでしょうか…

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